火曜日, 10月 12, 2010

Sofi Oksanenのフィンランディア文学賞受賞作を読む

2008年フィンランディア文学賞、2010年Nordic Council文学賞を受賞したSofi Oksanenの"Puhdistus"を読んだ。(英訳タイトル"Purge" スウェーデン語タイトル"Utrensning" 日本語訳は出ていないが「粛清」の意味。)

ヨーロッパに住んでいると、かつて鉄のカーテンの向こう側で起こっていたことを個人の体験談として旅行先のガイドさんや知人、あるいはスウェーデンにたどり着いて今はこの国に住んでいる人々などから未だに聞くことがある。この作品はフィクションだが、第二次世界大戦、冷戦、チェルノブイリ事故、90年代のエストニアと異なる時代背景の中で、ある家族の人生の記憶をランダムに交錯させながら物語が語られてゆく。話を聞いて想像していた向こう側の世界がこの作品の中で具現化している。

愛情、貧困、政治、恐怖、人身売買、語られているテーマは暗くて重いが、高品質なミステリーとして読むことも出来る。畳み掛ける劇的な幕切れが印象的。日本語訳が出ることを期待している。

関連リンク
Sofi Oksanen Wikipedia

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